この記事では、素朴な食パンの過去のレシピについて書いています。
有名店以外は中々配合を出すお店は少ないもの。
美味しいと感じたパンを食べるときに、
このパン、どんな食材使ってるんだろ?
と、ふと思ったことありませんか?
気になっても中々聞けない配合を今回はご紹介いたします。
素朴な食パンってどんなパン?
素朴な食パンの「素朴」とはお店のコンセプトである「飽きない味付けと食べ切れる大きさの毎日サイズのパン」を形にした食パン。
嗜好品ではなく、日用品としての食パン。
スーパーほどお値打ち品ではないけれど、毎日食べる食パンとして毎朝のちょっとした贅沢を手頃な価格で提案した食パンとなっています。
助手として仕事をしていた「日本パン技術研究所」で製パン試験をする際に標準配合として使っていたレシピがベースとなっています。
配合としては面白みのない配合ですが、とてもシンプルで差のわかりやすく、体調や気持ちに左右されやすいので日々の目安として採用しました。
あっさりとした味付けなので、何にでも合わせやすく毎日食べられる食パンになっています。
配合(2014年当時)
販売当初の配合を載せています。
小麦粉(ミリオン/日清製粉) 100%
砂糖(上白糖) 6%
塩(食塩) 2%
脱脂粉乳(北海道乳業) 2%
生イースト 2%
水 72%
油脂(ショートニング) 6%
※ 記載はベーカーズパーセント
① 小麦粉のポイント
小麦粉が「ミリオン」というマイナーな銘柄を使っています。
ミリオンは製粉会社大手の日清製粉が作っている外国産小麦を使用した強力粉です。
有名なところでは「カメリヤ」があります(スーパーなどではスーパーカメリヤです)
カメリヤより灰分が多いので、扱いやすく安定した作業が出来るのがメリット。
製パン用の問屋さんも扱っているところが多く、お手頃な価格なのもポイント。
デメリットとしてはcottaや富澤商店など家庭用製菓材料店での小袋販売がなく、一般家庭では買いづらいところでしょうか。
② 砂糖、塩、脱脂粉乳のポイント
砂糖、塩、脱脂粉乳はスーパーでも販売しているメジャーなタイプ。
問屋さんの納品日が少なかったこともあり、切れてもすぐに補充できるよう保険を兼ねてどこにでもあるものを。
砂糖が対粉6%というのは市販の食パンよりちょっと甘さ控えめ。
塩は対粉2%で標準的な配合となります。
脱脂粉乳を対粉2%入れているのは味付けよりも発酵具合による焼色のブレを抑制する役目がメイン。
大きなパン屋のように発酵を完全にコントロールできる設備を導入するスペースがなかったので、発酵具合によってパン酵母が砂糖を食べすぎてしまった場合の保険として。
焼色が付きづらくなりますが、パン酵母は焼色につながる脱脂粉乳の乳糖を食べることができないので入れた分だけきれいな焼色がつくのが入れるメリット。
その分、乳成分のアレルギーが入ってしまうのがデメリットです。
③ 使うパン酵母のポイント
使っているパン酵母は「生イースト」
いわゆるサッカロミセス・セレビシエという純粋なパン用酵母です。
最近では天然酵母というジャンルが確立されていますが、基本はパンの発酵用に発見した酵母を使用しています。
ビールはビール酵母、ワインはワイン酵母と専門家がいるようにパンにも専門家がいます。
生イーストはパンの発酵に適した酵母を探し出してきて純粋培養して、そのままブロック状に固めたものです。
対粉2%は標準的な量で、よくあるイースト臭も少なく小麦の風味を邪魔をしない量です。
メーカーが探し出してきた酵母の種類で風味が変わるのも面白いところ。
この時は前に働いていた株式会社カネカの生イーストの風味が好きでロス覚悟で使っていました。
製品の70%程度が水分なので、大きさの割りに酵母量は少なめ。その分多く入れます。
生イーストは賞味期限が短いため、家庭で使うなら「サフ」が有名なインスタントドライイーストや予備発酵が必要なドライイースト、冷凍保存が効くセミドライイーストなどがあります。
最近は少量でも販売されています(これでも小麦粉5kg分は作れます)
④ 油脂のポイント
練り込んでいる油脂は「ショートニング」
トランス脂肪酸はほぼフリーに近い数値のものを使用。
昔、マーガリンのトランス脂肪酸が騒がれた時、各メーカーがトランス脂肪酸フリーに取り組んだこともあり、販売されているショートニングやマーガリンはほとんどトランス脂肪酸が含まれていません。
塗って食べるタイプはまだ入っているものもあるみたいですが。
ショートニングを使っているのは食べたときに他の食材の邪魔をしないため。
バターはバターの味になるし、マーガリンは香料の風味に引っ張られる。
ショートニングを使うと味がないのがメリット。味がないのがデメリット。
ショートニングに使う植物油脂の品質によっては若干臭みが出ることも…
グルテンが伸びる際の潤滑油的な効果があるので、作業性がよくなるのもメリットかな。
オープン当初はメニューの大半がバター中心だったので、こちらを買って使ってました。
工程
素朴な食パンの製法は「ストレート法」
昔の教科書とかは「直捏法」と書いてるものもあります。
全部の食材を一回のミキシングで捏ねる製法で素材の風味が活かせるのと、引きのある食感を作れる製法です。
スーパーの食パンの製法である「中種法」には柔らかさは負けますが、スーパーの食パンでは出せないモチモチ感が味わえる製法でもあります。
モチモチ感が出る…ということは、安定性に欠けるので、職人の腕の見せどころ。
使いこなせば、リテールベーカリーの強みとなります。
各工程は設備によって違うので省略します。
改めて追記するかも?
現在は?
現在は7年間の環境の変化を経て、北海道産小麦や国産食材を使った食パンに進化!
まだまだ進化は続きます!